小噺帖

極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
ナイチンゲールの話(蔵出し)

ナイチンゲールの話(蔵出し)

 昔、あるところにシラルクとカカンという名の二人の若者がいた。家が隣同士で、二人はほんとうの兄弟のように育った。
 だがあるとき、二人は同じ娘に恋をしてしまった。争う二人に娘は、森でいちばん美しい声を持つナイチンゲールを捕まえてきた方の嫁になりましょうと言った。
 喜んだのは狩りの得意なシラルクだった。大人しいカカンは顔を曇らせたが、それでも受けて立つことにした。こうして、勝負が始まった。

 シラルクは幾日も森を歩き、数えきれないほどの鳥の声を聞いて回った。そして一週間目の夜明け、鈴を振るように美しい鳴き声で目を覚ました。見上げると、頭上の枝に一羽のナイチンゲールがとまって鳴いているのが目に入った。
 これだと思ったシラルクは罠を仕掛け、ナイチンゲールを捕まえた。だがそのとき、嬉しさのあまり強く手で抑えたので、小鳥の声は体からすっかり押し出されてしまい、小鳥は歌えなくなった。

 いっぽうのカカンは部屋にこもりきりで、土をこねて何やら作っていた。そして一週間目の朝、ようやく一個の土笛を作り上げた。

 娘の前で、二人はそれぞれの鳥を披露した。シラルクのナイチンゲールは歌えなかったが、カカンの土笛はナイチンゲールそっくりの美しい音が出た。そのため、娘はカカンの妻になりましょうと言った。
 シラルクは悔しくてたまらず、カカンをつかまえて言った。
「やいカカン、お前は俺のナイチンゲールから声を盗んだに違いない。森を歩きもしないで土の塊ばかりこねていて、そんな美しい音が出るものか」
 驚いたカカンは言った。
「シラルク、なぜそんな無体なことを言うのか。なら私が、この笛でもってナイチンゲールに歌を教えてやるから、誰の言うことがほんとうか、ナイチンゲールに訊いてみるがいい」
 覚えのあるシラルクはぐうの音も出ず、ナイチンゲールを連れてすごすご立ち去った。

 シラルクは村外れに小屋を立て、声の出なくなったナイチンゲールを世話しながら暮らしていた。
 娘と結婚したカカンはそのまましばらく幸せに暮らしていた。が、ある日、あの笛を見ると、なくしたナイチンゲールの声が詰まっているのに気がついた。

 カカンははっとして、その声を持ってシラルクのところへ駆けつけた。シラルクが声をナイチンゲールに戻してやると、ナイチンゲールは美しい娘になった。
 こうしてシラルクはナイチンゲールの娘をめとり、カカンと妻はあの笛でそれを祝った。
 そののち、みなで幸せにくらしたということだ。