殴る形に右手を握り上司の嫌味を聞き流す
腹に固まる疲れも愚痴も酒でそろっと溶かす夜
私のふるさと東の北で雪に透けてる街灯り
世界半分滅んだみたい君が遠くへ行った朝
走り始める電車の窓の故郷へ眼鏡をかけ直す
ビンタ一発浮気の面へザマミロ私はもう自由
もしも鳴き声ホーホケキョなら飼ってみたいなハト・カラス
落選通知のしょっぱい味は次へ挑めというエール
みんなあじさい大好きらしく街じゅうぼんやり咲いて雨
雨が近いんじゃないかと思う 揃いも揃って起きている
心配しないで生まれておいでまだ見ぬあなたが大好きよ
※友人無事出産
王は威厳を示すため山頂に自分の像を建て、日ごと像の影は王の威容と共に国を覆う。ある日誰かが反対の山に巨大な鏡を置き、陽光は像の影を城まで反射した。鏡には毎日落書きされ、像の影に台詞やら天使の羽が付く。王は面白がり、巨大な鏡を作らせて政策や座右の銘を書き、毎日毎日国中に反射させた。
森のようです花壇を埋めて風に揺れてるチューリップ
帰ろう帰ろう仕事は終わり仕事で落ち込むのも終わり
怪我なく事故なくまた日が暮れて今日も一日偉かった
乙姫と人魚姫の将棋対決が今年も始まった。よく訓練された色とりどりのタツノオトシゴを駒に、一進一退の攻防が続く。終盤、敵陣に攻め込んだ乙姫側の飛車がついに王手をかけ、勝負有りと思われた時、人魚姫側の王将が出産を始め、大量の子(歩)が盤面を埋め尽くして形成逆転に見えたが、二歩で失格。
太陽派に敗れた月派は地下に潜り、宿敵が彼らを忘れ去り隆盛を極める中再び動き出した。頭上の炎天に怯えつつも彼らは隠し持った月型のシールを街の路地裏という路地裏、物陰という物陰に貼り回る。やがて陽が落ち、怨敵の力たる日光を存分に蓄えたシールはこの世ならぬ月光となり地上を燦然と満たす。