見る/薔薇/醜悪 雨は嫌いだ。傘に篭って道行く人が人に見えない。ある傘はその下に一叢の薔薇を咲かせ、別の傘は二本脚の兎を宿し、或いは見知らぬ街並みを覆い、静々と雨中をゆく。それが各人の前夜見た夢の有様と知ったのは、傘の下の友人が化物に見えた日だ。見た夢を憶えていられないこの私はどのような姿だろう。