赤/雨傘/数式 彼が真っ赤なコートを着せられたのは泣き虫のせいだ。始終べそべそ湿っぽい彼は曇り空の多いこの街をなお暗くした。これで気も晴れるだろうという周囲の声に反比例して彼の嘆きは増す。僕はしんと静かな青がいいのに。と、街ですれ違う一人の女。曇天にも艶やかなそのコートは彼の望んでやまない青だ。