地方の神殿で神官が禍ツ神をかくまっていると通報が入った。珍しくもない案件なので、我々……秘跡庁騎士団はいつもの通りに現場を強襲した。
田舎の禍ツ神などせいぜい一柱か二柱だろう。たかを括っていたところ、中庭にずらり並んだ祠の住人(?)全てが禍ツ神で、もはや街の様相である。おまけに神官が丁寧に祀っているせいでどいつもこいつも噂以上に力を増し、攻め入ったはずのこちらをぶっ飛ばさんばかりの剣幕に一同完全に逃げ腰となった。
結局、神官をしょっ引くどころかその神官に間に入ってもらい、まずは退却のうえ秘蹟庁に取りなすということでようやく事無きを得た。
世の釣り合いを取るには禍ツ神も必要です、禍ツ神とて丁重に祀ればおとなしいものです。秘跡庁への伝言として老神官はそう言い、譲らない。最近は随分とにぎやかですよ、おたくら秘跡庁が取り締まりに熱心なお陰で。ちくりと付け加えられた一言に、返す言葉のない我々は渋い顔である。