不登校のヒロがいると聞き、学校帰りに隣町へ寄った。
教わった路地裏は僕くらいの子供で溢れていた。並ぶ店も色紙の花や手書きポスターで彩られ、カウンターの中にいるのも子供たちだ。手作りマフィンやクッキー、細かいビーズの指輪、庭草の花束、宝物を交換する蚤の市も。この路地裏は、子供の作る商店街なのだ。
怖々進み、本屋に着いた。並ぶ本は手製だ。画用紙を綴じたもの、ノートに書いたもの、家のプリンタで作ったもの。
「不登校の子たちが書いた本だよ。国じゅうから送ってくれるのを売ってるんだ」
声にはっと顔を上げると、ヒロだ。見たことのない明るい顔。
他の店主もみな不登校の子で、午前中ここのフリースペースで勉強し、午後から店を開くという。
学校はどう。ヒロの問いに僕は口ごもった。彼へのいじめを傍観した一人が僕、彼がいない今の標的も僕。バカな話だ。
「それ、見せて」
それ以上訊かずにヒロが僕の手を覗き込み、僕は握り締めてきた自由帳を差し出す。絵は僕の唯一の特技だ。すごいね、店に置いていい? ヒロが目を輝かせ、僕はうなずく。
ヒロ、ごめん。言いに来た一言が、やっと口から出た。