小噺帖

極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
俳句てふてふ

俳句てふてふ

そういえば春は来るんだズボン干す
マスク一枚の向こうに風薫る
掃除機で迎え撃ったる蚊一匹
夏至の暮れ烏三羽の位置関係
人類は少数民族大夏野
看護師の子が一秒も観ぬ五輪
死にどきと決めしか蠅の動かざる
親だから子だから喧嘩秋の風
ワクチンの筋肉痛に秋日降る
人が人をやめたような事件寒波の日
鴨の群れかき混ぜてゆく冬の風
ふきのとう味噌のげんこつおにぎり提ぐ
靴擦れに手当て車窓はれんげの田
ショウジキとチキショウが似る日の野分
窓なんてどこにでもある鳥渡る
句帳といふものの嬉しさ紅秋桜
台風の夜のタイ風の唐揚げよ
野分とは音を束ねた龍なるか
ごきぶりも夏の季語なり足音聴く
台風一過山水の茶とダムの茶と
袋ラーメン二つ食えなくなって秋
子がいたかもしれぬ人生天の川
ご先祖もみんな招いて芋煮会
龍淵に潜む寝入りばなにムカデ
「葬式は要らん、皆でサンマ食え」
栗おこわ宿題なんて後だ後
秋虹や国とは民のためのもの
プレバトが休みで秋の夜は長し
灯恋しブリ照りの匂いの幽霊
まちがえたままの人生天高し
被災したクモの巣秋空に再建
勇ましいニュースの隅の枯れ葉かな
級数のための投句か秋寒し
村に来て明るさを知る十三夜
お互いの熱の恋しさ秋烏
のり面落ちる枯葉一枚分の音

トンネルに右脚残しきりぎりす
春日傘WBC観ぬ同士
拾い犬のいびき微かに朧月
人間を信じぬ犬と見る菫
幸せは犬の匂いの春ショール
こどもの日膝に十六キロの犬
犬急病 羽虫百匹撥ねつつ獣医への夜道
蛾も犬も人もねんねの2DK
濡れ靴に夏蝶止まりきて土曜
犬の舌の影ひらひらと梅雨晴間
アスファルトのイモリにも沢蟹にも雨
電光で発火せる雲ひとつだけ
横転のワゴンひぐらしひぐらしひぐらし
避妊待つ犬のおっぱい数えて秋
許されぬ許せぬ相手秋の雨
乾かない犬用ベッド秋暑し
換毛期の犬くしけずる秋の雨
ドッグランデビュー満開の秋桜
山の端にまだ引っかかる秋の雲
秋の日は明るしモグラ獲る愛犬
目張り用テープ売切れ冬籠
ハーネスに霰ぱらぱら散歩道
風邪引きを犬の見守る冬座敷
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