小噺帖

極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
006:ポラロイドカメラ

006:ポラロイドカメラ

 夏の暮れ方、空のそこここに塊をなす雲の、奥のひとつだけがぱっと内から発光した。
 それだけが雷雲なのだ。そう思ったきり忘れて家に帰ったが、実はあれが雷神の婿探しであって、あの瞬間、雷光を見た僕の姿もまた雷雲に焼き付けられたのだそうだ。
 それを知ったのはその夜、散歩に出た空に浮く雲を見た時だ。お前に決めた。そんな声が確かに聞こえ、巨大な巨大な鯨のごとき雲の、ちょうど目の位置が切れた奥にぎらりと光った一番星が、思わず見上げた僕の眼を彼方より射すくめた。
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