小噺帖

極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
三題噺

三題噺

嫉妬/金髪/駄目なひと

「一家で野球をする」が父の口癖で、当然の結果として僕らは九人姉弟だ。その父にひょんなことから隠し子が発覚、問い詰めるとあちらの兄妹も九人だという。ほら試合には二チーム要るだろという言い訳の途中で怒髪天の長姉が父をぶっ飛ばし、泣き崩れる母に寄り添う子供一同、修羅か般若の面相である。

嫉妬/茶髪/ひとりぼっち

ともあれ双方全員で対面、母親二人も加え二チーム対戦へと雪崩れ込む。あちらの兄妹九人のうち二人は幼児とてなぜか僕が貸し出され、情け無用の九回勝負が開幕。頼んでもいないのにジャッジに立つ父の開口一番「プレイボォォーイ!」を怒髪天の長姉のバット、あちらの長兄のボールが物理的に黙らせる。

薬/日焼け/自己防衛

六回を終え勝負は一進一退、火花散る熱戦どころか艦砲射撃の応酬である。僕はと言えば試合を追うのもやっとの運動音痴、敵(実家)の支援どころかよりによって飛んできた長姉のエラー球を味方(他家)の長兄怖さに見事キャッチ。お兄たんスゴい、味方(他家)の幼児二人に和む僕に長姉の拳がめり込む。

ベッド/日焼け/ペダンチック

布団に寝転ぶ僕を幼児二人が踏んでマッサージしてくれる。結局15回引き分け後、両家は我が家の居間で親睦雑魚寝お泊り会だ。蓋を開ければ僕一人が両家の長子に殴られまくる展開で、抗議すると、要領の良さが父に似てると全員が即答。災い転じて福と成せ、いい事言った風の父を幼児の暴投球が捕えた。
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