気分だけでもと、ドアに安物のクリスマスオーナメントを飾った数日後、木馬の模型が取れていた。捨てるのも気の毒で拾うとソレがしゃべり出し、自分を正月飾りに使えと言う。ちょうど注連飾りもないし、好都合とばかりにドアに吊るしてやると、左向きにしろと注文がついた。縁起物だと言うので調べたら本当らしく、左馬という記述があった。
大晦日の夜、あの馬を先頭に世界中の馬という馬が左へ左へ地球を駆ける夢を見た。この国を筆頭に世界へ新しい年を告げに行ったのだろう、目覚めるとドアの馬は影も形もなかった。が、耳の奥で微かに轟く馬蹄の音にその一年じゅう駆り立てられ、今こうして世界を経巡りながら馬の写真を撮り続けている。