秘密基地への旅 | 小噺帖

小噺帖

極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
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秘密基地への旅

秘密基地への旅

 ベランダは植木鉢とプランターでぎっしりで、その一つ一つにわんさとお花が咲くものだから、絵本で見たジャングルそっくりに見える。
 毎朝全部のお花にお水をやった後、ベランダの隅の子供用テントで朝ごはんにするのがあたしのお気に入り。テントの入り口をいっぱいに開ければ空も街も見えるし、小さな覗き窓から見る花たちは本物のジャングルだ。
 ほんとの森に行ってみたいけれど、ママもパパも決まって「下界は危ないからダメ」と言う。仕方なくあたしは83階のベランダの強化ガラスに顔を押し付けて、遥か下の世界を眺める。
 何十年も前、環境汚染のせいで人々は巨大な高層ビルへ逃げ込んで暮らし始めた。でも貧乏な人たちはそこに入れなくて、今でも汚染を我慢して下界……ビルの外の世界に住んでる。ベランダの開かないガラス窓から見える下界はくすんだ色とりどりのごちゃごちゃがどこまでも続いていて、その間からここみたいな高層ビルが生えてる。ビル同士空中通路で繋がっているから、あたしは下界に一度も降りたことがない。
 いつかこの花たちに種を外に飛ばしたら、下界のずうっと先のジャングルに連れて行ってくれる気がする。
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