小噺帖

小噺帖

極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
極小一次創作。よそで作った三題噺や都々逸の一時的集積所。
薬/悪趣味/猫も杓子も

薬/悪趣味/猫も杓子も

沼の水を飲むと山に取られる。噂を面白半分で試したが何も起きず、拍子抜けして戻ると村は廃墟と化していた。スマホは不通、住民?も得体の知れぬ服で顔貌も言葉も歪んでいる。逃げ戻った山中で迷い込んだ集落の人々はまともだが全員が水を飲んだとか。ここ以外の全人類には僕らが歪んで見えるそうだ。
秘密基地への旅

秘密基地への旅

 バイト先のカフェでへまをした。置いたコーヒーがお客さんの服に跳ねたのだ。よりによって真っ白なコットンシャツで、点々と飛んだ茶色は慌てて持ってきたシミ取り剤より手強かった。けれど平謝りの僕に、お客のおばあちゃんはあらいいのよ汚れてもいい服なんだからと笑い、クリーニング代をどうしても受け取らない。おばあちゃんのコーヒー代を無料にした店長に、あんなお客様ばっかりじゃないからねと釘を刺された、その数日後。同じ席に白いシャツが、続いてあのおばあちゃんが目に入った。同じようにオーダーされたコーヒーをさすがに震える手で運んでいった僕は、おばあちゃんのシャツにふと目を止めた。この前のと違って点々と小さな花の刺繍が……
「気がついた? これ」
 おばあちゃんが笑う。コーヒー染みを隠して刺繍の花が咲いている。へええと声を出した僕に、おばあちゃんはいたずらっぽく声を潜めてシャツのあちこちを指差した。
「ミートソースに、お醤油に、泥」
 確かに、その箇所の刺繍はこの間も見た気がする。
「だからね、ほんとは汚れるのちょっと楽しみなの」
 おばあちゃんの囁きは世界の秘密を打ち明けるような声だ。
黒/伊達眼鏡/ジキルハイド

黒/伊達眼鏡/ジキルハイド

特訓の甲斐ありついに幽霊屋敷の主に三勝したが、彼は成仏どころか好敵手との別れをやたら悲しむ。仕方なく再訪を約して帰ったその日から烏や黒猫が催促の手紙を付けて続々来訪、観念して友人一同引き連れ流行りのボードゲームを持参したところ大喜びされ、徹夜勝負となったがテキは幽霊、眠気が無い。
深海/犬/ジキルハイド

深海/犬/ジキルハイド

嵐の夜に迷い込んだ荒野の幽霊屋敷で望外な歓待を受けたが、気難しそうな老主人はチェスで三度勝たねば帰さないという。受けた勝負で手も足も出ず、このまま地縛霊化を覚悟したが、主人は意外にも手取り足取り教えてくれる。老執事囁いて曰く、主人は無類のゲーム好きだが訪う客とて無く成仏できぬ由。
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